第五章

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 山を抜けるまでにかなりの時間がかかると考えていたが、オレのその予想ははずれ、すぐに民家がちらほら見える道にでた。   『やっと脱出できたな。アイツの家までは遠いからな…とりあえず駅まで歩くぞ。迎えにきてもらおう。』   諫早とはオレの住んでいる市の隣の市であり、電車で30分もかからなく到着するほど近い場所にある。 しかしオレは今まで自分の地元の大村(おおむら)市から外に出ることがあまりなかったのでここの地理に詳しくない。ここは駅まで佐々木の後ろについて行くのが無難な選択である。   不安ではあるが……。   佐々木の話しでは駅まではあと15分くらいらしい。 道路の近くには民家もある上に見通しもいいのでキメラが出てくる可能性は低いが、最近は予想を覆す事ばかり起きているので自分の予想はあてにならない。オレは四周を警戒しながら歩いた。   だが…。   『あはははは。冗談キツイなぁ、お前は。何?だから車が使えなくなったんだよ。早く駅まで迎えに来てくれよ。それよりこの前のアレ見たか?最高だったよな!!』   佐々木は携帯電話を片手に爆音で受話器の向こう側の相手と会話をしている。先程の事などとうに忘れているかのようだ。   しかし、会話の内容からして電話の相手は今から会いに行く人物のようだ。佐々木が楽しそうに話しているからきっと明るい感じの人物なのだろう。   オレの中の、もうすぐ会う人物に対する不安が少しだけ、消えていった。 これも佐々木の気遣いなのだろうか…。わざとオレに聞こえるような声で話して、オレの不安を取り除こうとしてくれているのかもしれない。   『最近久々にキメラにあってよぉ、あの緑のヤツ。なかなか見ないタイプやったけんな。何かいいことあるもな!!はははは。』         ……いや、それは無いか。
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