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駅の方をを振り向くと、そこには長身で痩せ型、シャープな眼鏡をかけている男が慌てた様子でこちらへ走って来た。
『ごめんごめん!!急に腹の調子が悪くなって…我慢できなかったんよ。』
佐々木は『お前らしいな』と笑ってその男の肩をポンポンと叩いた。
間違いない。この男が佐々木の言ゔ綱崎 幸一"だろう。
しかし、イマイチ頼りがいのなさそうなタイプである。
『紹介しよう。コイツが例の少年、゙裕司"や。今日はコイツも泊めてもらってもいいか?』
例の少年?術を知っているって事か?
佐々木が幸一にオレを紹介し始めたので、とりあえず幸一に軽く挨拶をした。幸一もそれにつられて慌てて頭を下げる。
頼りなさそうな人ではあるが、変な人ではなさそうだ。オレの不安の気持ちは大幅に減少した。
『早速やが幸一、今からお前の家に連れていってくれ。これだけの人間がそろうと外に出とくのは少々危険や。』
確かに佐々木の言う通り、゙術(すべ)"を知っている人間が3人も集まるとそれを集めようとする敵にとっても都合が良い。ここは一刻も早く隠れた方が良い。
幸一もそれを理解しているようである。
『そうだな…佐々木の言う通りだ。二人とも、早くオレの車に乗ってくれ。』
そう言うと幸一は先程からオレ達の前に止まっていた黒の車のドアを開けた。佐々木は不思議そうに幸一に言う。
『幸一、それお前の車やないやろ。あの車はさっきからあったし、お前の車は白の中古の軽自動車やろ。』
すると幸一は腰に手をあて、自慢げに言った。
『これお前に会ったときに自慢しようと思ってね。どうだ?オレの新車は』
オレ達はずっとその車の前で立っていたのに…
『最初からそれを言っとけ!!』
佐々木は幸一の頭を軽く叩いた。幸一は叩かれた理由がわからず、困った様子で車に乗り込んだ。
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