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幸一の家までは駅から15分程で到着した。しかしそれは貧乏学生が済むようなボロボロのアパートで、特殊任務を任せられている人間の住む場所とは到底思えない。
しかし、どうやら一人暮らしのようなので少し安心した。
『どうぞどうぞ。狭くて汚い部屋ですが。』
幸一は自分のアパートのドアを開けてオレ達を中へエスコートした。オレはズカズカと入って行く佐々木の後ろから付いていくように部屋に入った。
部屋は四畳半程の広さで足の踏み場もないくらいに服やらゴミやらが散乱していた。
確かに、幸一の言う通り狭くて汚い部屋である。
幸一はベッドに腰をおろして佐々木に言った。
『さて…佐々木。今の状況と佐々木の任務の内容はだいたい把握してる。すでにお前から電話で聞いてるからね。それとは別に、何か言いたい事があってオレと会ったんだよね?
裕司君をわざわざ連れて来たって事は、今回の任務を手伝ってくれってのがオレの予想なんだけど…どうなんかな?』
そう言うと幸一はシャープ眼鏡をゆっくりと外し、佐々木を見つめた。
眼鏡を外す意味はあったのか?
しかし周囲の空気はずんと重くなり、オレはそのなんとも言えないプレッシャーに息苦しさを感じた。
やはり、゙術(すべ)"を知っている人間はどこか違う雰囲気を隠し持っている。
しばらく沈黙が続いた。
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