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『お前のその話、本当なんだろうな…?』
幸一は先程と違い、今度は鋭く睨みをきかせて佐々木に言った。しかし、佐々木はとぼけてヘラヘラ笑っている。
『え?もしかして今の聞こえてた?しまったなぁ、独り言のつもりだったのになぁ。』
『佐々木…!オレは本当かどうかを聞いているんだよ。』
最初に幸一が眼鏡を外した時よりも重いプレッシャーがオレにのしかかってきた。まぁそれに恐怖感は全く感じられなかったが…。佐々木は真剣な赴きで質問に答える。
『幸一、オレは嘘はついてねぇよ…したがって、その話については本当や。
最後にもう一度だけ質問するぞ。…幸一、オレ達に協力してくれるか?』
そう言うと佐々木はズボンのポケットから小銭を取り出し、゙術(すべ)"を使ってそれを幸一に発射した。そのスピードは初速の時点で、プロ野球選手のストレート球くらいはありそうな速度だった。小銭とはいえ、これほどの速度をもっていれば痣ができるだけではすまないだろう。
しかし幸一は避けたり受け止めたりという動作はとろうとせず、うつむいてじっとしている。
(危ない!!幸一さん、よけて!!)
オレの願いは虚しく、小銭は一直線に幸一へ飛んでいく。
しかし小銭は幸一に衝突する寸前の位置でピタリと停止し、力無くパラパラと床へ落下した。
まるで、映画『マト○ックス』のワンシーンを見ているかのように。
幸一は再び眼鏡をつけ、佐々木を斜め45度の角度で睨み付けて言った。
『゙術(すべ)"はまだコントロールできるみたいだな…。
面白い話じゃないか。協力しよう。』
『交渉成立やな…。』
佐々木は先程幸一へ向け発射した小銭を自分の掌へ引き寄せ、言った。
オレは再度思った。
眼鏡を脱着させる意味はあるのだろうかと。
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