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『………』
オレは一人、ベランダへ出て夏の夜の風を浴びていた。
複雑な気持ちでは無い。ただ、゙恐怖"という一つの感情があるだけだ。それがどんどん膨張してオレの心臓を飲み込んでしまいそうになる。
『寝れないんか?』
佐々木がベランダへでてきてオレの隣に腰掛けた。佐々木も寝ていなかったのだろうか?オレは佐々木の方をを見ずに首を縦に振った。
『怖いのか?』
『………うん。』
『しかたない。だって明日死ぬかもしれないんやけんな。寝れなくなる気持ちもわかる。オレもこの部隊に配属されたころは怖くて寝れない日が続いたもんや。』
『意外だなぁ…佐々木さんもそんな時があったなんて。』
『当たり前やろうが。オレだって人間や。でもなぁ、今はもう恐怖を感じないのかと言ったらそういう訳じゃない…怖いという感情は最初と何ら変わりないんや。
ただ、それを打ち消すほどの大きさの別の感情が生まれただけや。』
『別の感情?』
『使命感と責任感や。怖くてもそれを打ち消すほどの使命感と責任感があればガタガタ震えながら明日を待つ事は無くなる。
でも、その使命感と責任感とを持つには何らかのきっかけが必要だと思う。』
『きっかけ?佐々木さんはどういうきっかけでそう思えるようになったの?』
佐々木は少し哀しそうな表情で話し始めた。
『オレが生まれて初めで術(すべ)"を知る人間と戦闘をした時やった。相手は感情をコントロールされていて、もはや人間とは言えない状態だった。
その時のオレに与えられた任務ば戦闘による敵の人的戦闘力を削減"。したがって目の前に現れた敵は無条件で廃除する必要があった。』
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