第五章

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『オレはこの時にはすでに゙術(すべ)"を自由にコントロールできとったから戦闘はそんなに苦労しなかった。 しかし人を傷つけるのは嫌なもんや。たとえそれが感情の無いロボットみたいな奴でもな。   だがオレがとどめを刺そうとした時、ショックによるものなのかはわからんが…敵の感情が元に戻ってな。そいつがオレの足を掴んで泣き震えながら゙佐々木、お願いだ、殺さないでくれ…殺さないでくれ"って言うんだ。   敵に良いも悪いもない。だが、中には好きで敵になった訳じゃない奴もおるんや。だからオレはこれ以上゙仲間"がそうやって死んで行くのを見たくない…。そしで仲間"を助けることができるのは、゙術(すべ)"を知る人間であるオレしかいないと思った。   そういった体験がオレに使命感と責任感を与えたんや。だからオレは今もこうして戦う事ができる。……話が長くなったな…わりぃ、オレはもう寝るわ。』   佐々木は立ち上がり、ベランダの窓をあけて部屋の中へ入って行った。       オレはさっきまで死への恐怖で怯えていた自分が恥ずかしく感じた。   オレはそんな小さいもののために戦っている訳ではなかったのだ。そう、自分の命などでは比べようがないくらい大きな存在のために戦っていたのだった。   佐々木とは少し違うが、オレにも戦うための十分な理由がある。そう考えると自然と胸が楽になった。   …これなら眠れそうだ。   オレは拳を握り、軽く自分の左胸を叩いて部屋に帰った。   そしてソファで寝ている佐々木に軽く一礼をし、布団に潜り込んだ。
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