第六章

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 目的地の大多武演習場までは1時間と少しかかるそうだ。 しかし何故、連中は敵である自衛隊の敷地内に拠点を置いたのだろうか?これでは『いつでも攻めに来て下さい』と言っているようなものである。そもそも、拠点を建てる前に建築過程で気付かれなかったのか?   オレには連中の思考が理解できなかった。   すると佐々木は、『じゃあ何であの時質問しなかったんだよ』と言って、オレの頭を叩いた。   『゙白い家"の連中が大多武演習場に拠点を置けた理由だが、実は自衛隊の演習場には周囲にフェンスがたてられている訳じゃねぇ。ある程度はたってるんだが、人が入れそうに無い所なんかには全く何もない。だからといって監視カメラが設置されているわけでもない。したがって、中に入るのは造作もないこと。   そして自衛隊敷地に拠点を置く理由。それはこの大多武演習場に昔から存在する゙噂"が拠点の建築を非常にやりやすくさせていたからや。』   『ウワサ?その大多武演習場にはどんな噂が流れていたの?』   オレが質問すると佐々木は、少し遠くを見ながら答えた。   『霊的な噂や。昔からあそこにはそういった話がいくらもあった。それがあまりにもリアルで発見者・被害者も多数いる事から、不審な音や人影があっても索敵は行っていなかったんだよ。   連中にとってはこんな良い環境で行動できる所は他にない。そこでこの大多武演習場の敷地の地下に拠点を置くことにした…という訳や。』   霊的…。そういえばニュースで゙白い家"の誘拐・殺人事件は霊的なものでは?…と言っていたな。あながち、間違いでもなかったということか…。   あの日…ニュースを見たあの日が、オレの人生を大きく変えた日だったのだ。   オレは拳を固く握りながら目的地へ到着するのを待った。
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