第六章

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 やがて、車は大多武演習場に到着した。演習場へ向かってのびている一本の道の前には大きなフェンスが設置されている。 佐々木は幸一に車をフェンスの近くまで進むように指示をした。   幸一はフェンスから約2メートルの距離で車を停車させた。   『………』   『………うわ!!なんだ!?』   車が止まった瞬間、道の両脇にある茂みから黒い影がいくつも飛び出し、あっという間にオレ達の車はそれに囲まれてしまった。まさか……!!   『……敵!?』   オレが車の中でしどろもどろしている横で佐々木と幸一は、いたって冷静な様子だった。   そして佐々木は助手席のウィンドを開けてひょこりと顔を出した。よく見ると黒い影は偽装をした人間だ。   『オレや。ブルーアイズはおるか?』   ブルーアイズ?   佐々木の顔を確認した人間は見事なまでの敬礼をし、車から一番離れている場所に位置している者を連れて来た。あれがブルーアイズという人物なのか?   『佐々木二等陸尉でしたか。では細部の敵情を下達します。』   ブルーアイズらしき人物は聞こえるか聞こえないかというくらいの小さな声でオレ達に敵の拠点の細部の場所について説明をし、それが終わるとフェンスをゆっくりと解放させた。   そして車はゆっくりと大多武演習場内へ進んで行った。   『佐々木さん、今の人達は?』   『あれは特殊作戦群の警戒班や。24時間体制であそこで部外者が入らないように監視をしとる。ちなみにさっきオレ達に情報を提供したのはブルーアイズ。本名は別にあるが、本人がコードネームで呼ばれる事を熱望しとるから皆そう呼んどる。』   演習場所内をしばらく走ったところで車の速度が急激に減少した。   それと同時に周囲の雰囲気は急変し、物凄いプレッシャーがオレ達にのしかかった。   『分進点を通過したね。……裕司君、もうすぐ車から降りるから準備をしておいてくれ。』   オレの心臓が速く、大きく鼓動していくのを感じた。
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