第六章

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 しばらくして幸一は車を停止させた。すると佐々木と幸一は素早く下車し、道路の端に隠れた。不思議な事に、その動作をする中で殆ど音が聞こえなかった。これがプロの力か…。   『裕司君も車から降りて。』   幸一に言われてオレも急いで下車し、二人の行動の真似をする。三人が下車した所で佐々木がこれからの行動を説明した。   『この道沿いを直進したら敵の拠点がある。その少し手前で、クール扇(コードネーム)を長とした偵察班が待機をしとるはずや。そいつらからさらなる敵の細部の説明を受けたのち、敵の拠点に攻め込む。なお、これからの行動は緊急時以外、無声を追求する。了解か?』   『『了解』』   オレ達は道路の端を這うように歩いて、偵察班のある場所に向かった。   ガサガサ……   風で草木が揺れる音さえも敏感に反応してしまう。オレの緊張の糸は限界まで張り詰め、いつそれが切れてしまってもおかしくない状態であった。   しかし、佐々木と幸一はその音には全く反応しない。おそらく、自然の音とそうでない音を聞き分ける事ができるのだろう。     しばらく歩いていると、前方に小さい丸い何かが落ちているのに気付いた。   『コレ…何かな?』   それは原色に近い青色の物体で、どう見ても自然の物ではない。危険物の可能性も考えられることから、うかつに触ることができないので、佐々木が゙術(すべ)"で転がしてみる。   どうやら爆発的では無いようだ。佐々木はそれを拾ってさらに確認する。   『これは…スーパーボール?』   不審物の正体は、よく弾むスーパーボールだった。しかし何故このような所に?   オレ達はそのスーパーボールをもとの場所に戻し、再び歩き出した。   佐々木は偵察班の待機位置まであと約100メートルであると、オレ達に耳打ちをした。
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