第六章

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『この辺りのはずなんだがな……ん?これか!』   クール扇の言った通り、待機位置から100メートル程進んだ場所に杉林が生い茂っている。   そしてその杉林の奥の方に一本だけ、松の木があるのを確認した。   あそこに敵の拠点があるのか……。ここからは更に警戒が必要である。   『おい、何やってんだ?早く松の木まで行くぞ。』   そんなオレの緊張を叩き壊すように佐々木はズカズカと林の中へと入って行った。   それは無いだろ……   『ちょっと佐々木さん!!そんなに音をたてちゃまずいよ!!』   『大丈夫や。お前達、ここが自衛隊の敷地って事を忘れんなよ。連中はアウェー…外に監視員なんかを設置すると、それが敵眼(自衛隊)に暴露される危険性がある。そうなると圧倒的に不利な状況になる事は間違いない。奴らもそれは避けてくるだろうからな。』   確かに。佐々木の考えに間違いは無い。だとしたら…     何で今まで緊密に行動していたんだ?     若干の疑問は残ったが、今更その事についての議論をしてもすでに終わった事なので、疑問のままにすることにした。   ガサガサと整備されずに無造作に生えている雑草を掻き分けながらオレ達は進んで行く。     そして佐々木の言った通り監視員やキメラどころか罠にすらかかる事なく松の木に到着した。   それは遠くで見た時とはまるで別の物かのようで、恐怖を感じる程に妖しく、大きくオレ達を威嚇している。   ここに敵の拠点がある……。   優子をあんな目にあわせた奴がもしかしたらここにいるのかもしれない。 オレは無意識のうちに自分の拳を握りしめていた。
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