第六章

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『幸一、さっき10匹ずつだって言ったやろ。これじゃ裕司の練習にならないんだよ。』   幸一は力無く倒れているキメラの塊を見て、申し訳なさそうに頭をポリポリかいた。…どうやらオレが倒し損ねた7匹は全て幸一が倒してしまったようである。   佐々木のように派手な゙術(すべ)"を使ったわけでもないのに…。   本当はとんでもない人物だったのだ。   『すごいよ幸一さん!!あんなに沢山のキメラ達を……゙術(すべ)"も使わずに倒しちゃうなんて!!』   すると困った表情のまま、幸一はオレに言った。   『違うよ裕司君。オレは今、術゙(すべ)"をフルに使って戦っていたんだよ。』   どういう事だろうか?幸一の戦闘でキメラが不思議な動きをしたり、普通では考えられない現象が起きたりはしていない…。あれは誰が見ても生身で戦ったようにしか見えない。   幸一はポケットから眼鏡を取り出し、丁寧にそれを着けてオレに言った。   『ここまできたら勿体ぶらずに教えよう。オレの゙術(すべ)"ば変換"。対象の0km/h以外の速度を持つ物体の速度の単位を分母分子反対にする能力だよ。』   やはり人の゙術(すべ)"というのは一度聞いただけでは理解できない。オレは幸一にさらに詳しぐ術(すべ)"の説明を受けた。   『簡単な話、速度30km/hで走る人がいる。それを対象にオレの゙術(すべ)"を使うと…その人の速度は30h/kmになるって事。   基本的に単位っていうのば分母当たり分子する"という意味なんだよ。   速度もそれに当てはまる。30km/hっていうのは1時間当たり30km進むって事だよ。   つまり、゙変換"した30h/kmの意味は…』   幸一は眼鏡を、部屋の照明を使ってキラリと光らせて言った。         『1km当たり、30時間かかるって事。』
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