第七章

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『織田っちゅう奴の゙術(すべ)"は速度系で間違いない。オレ達と幸一を別にしたからな…速度系じゃ幸一には勝てない。』   佐々木の言う通り、幸一をオレ達と別にしたのば術(すべ)"の相性が悪いからだろう。しかし詳しくはわからない。もっと敵の行動を観察しないと…。   オレは先程とは一転してガードを上げ、更に重心を下げて防御の体勢に移行した。   その行動を見て織田は、込み上げてくる笑いを押し殺すように言う。   『くくく…。防御に徹してオレの゙術(すべ)"を探ろうって考えですね?別にオレは自分の゙術(すべ)"を隠しているわけじゃないんですよ。話したところで何も変わらないから言わないだけなんです。 ですが、今回は君達の実力は実に素晴らしい。特別にオレの゙術(すべ)"を教えましょう。』   『何勿体振ってんだ?焦らすのはいいからさっさと教えろ!!』   織田は佐々木の言葉に対してヤレヤレと呆れたように肩を上げる。   『まぁそんなに焦らないで下さいよ。今に説明しますから。 オレの゙術(すべ)"は操作…物体との衝突における゙跳ね返り係数"を操作する能力です。』   佐々木は身を乗り出すように織田に問い掛けた。珍しく動揺しているようである。    『お、おい!跳ね返り係数を操作って…゙1以上の値"にもなるのか!?』   織田はニヤリと笑ってゆっくり頷いた。   『鋭いですね…さすが特殊作戦軍の人間だ。 答えはYESですよ。その気になれば5にも10にも出来る。』   …5にも10にも!?その数値がどれほど危険なのかはオレでも解った。   物体が壁(床)と衝突運動をする時、物体は衝突直前の速度を超えない範囲の初速度で跳ね返る。   その゙跳ね返り具合"を表すのが跳ね返り係数であり、その値が゙1"であれば物体は衝突直前の速度と同じ速度で跳ね返る。 早い話…物体が跳ね返る時、跳ね返り直後の速度は跳ね返る直前の速度の゙跳ね返り係数の値"倍になるという事だ。   例をあげると…100km/hで壁に衝突したボールがあり、その時の跳ね返り係数の値が0.5であれば跳ね返った時の速度は50km/hになる。   ここで注意が必要なのは、゙跳ね返り直後の速度は跳ね返る直前の速度を超えない"という条件だ。したがって跳ね返り係数の値(e)は必然的に゙0≦e≦1"となる。       ………通常は。
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