第七章

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『や…やめろ…!!来るなぁああ!』   もはや織田からは余裕の表情は消え、ホラー映画のワンシーンのように腰を抜かして手足をばたつかせていた。そんな織田の姿を見て佐々木は肩を落としてため息をこぼす。   『はあ…。こんな情けないツラを見せる奴にオレは殺されかけてたのか?こりゃ恥ずかしくて細部を本部(うえ)に報告できねぇな…。』   『来るなあ!来るなあ!』   佐々木が織田に近づくと、織田は狂ったように叫び闇雲にスーパーボールを投げつけた。もうあの時のプレッシャーは全く感じられない。 だがそんな織田のあがきも虚しく、スーパーボールは後方にいる幸一の゙術(すべ)"により一瞬で速度を失い、全て床に転がり落ちる。   『佐々木…もうそろそろ終わらせてくれよ。』   『了解。早く帰ってゆっくりしたいしな。……ってなワケでな、くたばれや……インテリ野郎!!』   そう言うと佐々木は地面に根をはるようにずしりと構えた。物凄い圧力を佐々木から感じる。突きの見本をオレに見せてくれた時以来…久々の感覚だ。 そして渾身の力で織田に中段突きを放った。それはボクサー顔負けの速度で正確に織田の胸部にねじ込まれた。   織田は悲鳴をあげることなく倒れ込み、ピクリとも動かない。幸一はそれを確認して織田に近づき、動けないように両手両足を後ろで縛った。   佐々木は構えを解いて言った。   『今突いた所は壇中という急所で、心臓に直接ダメージを与える部位や。かなりの力で打ち抜く必要がある上に命中させるのが困難だが、うまくいけば一撃で心臓の機能を停止させることができる。 キメラなんかは肉厚があるから心臓への直接ダメージは与えにくいが、人間相手にはとてつもない効果を発揮する。覚えておけよ、裕司。』
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