第七章

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体積がないのなら攻撃をどうやって当てればいいのだ? ヒトミは耳障りなほどに甲高く笑いながらオレ達を見下している。   『ほほほほ!!私の偉大さがわかったかしら?こんな素晴らしい゙術(すべ)"を持つ人間に殺されるのなら本望でしょう? それじゃあ、3人まとめて死んでもらうわ……!!』   『…下品な笑い方だ。』   ヒトミがこちらに向かって走り出したが、幸一は冷静にポケットにしまっていた眼鏡を装着して手の平をヒトミに向けた。どうやら゙術(すべ)"を使うみたいだ。     しかし……     『幸一、あなたの゙術(すべ)"は私には通用しないわ。私がこの拠点の指揮官である理由よ。』   幸一が゙術(すべ)"を使って速度の変換をおこなったにも関わらず、ヒトミの身体はみるみるうちに縦に縮んでいきやがて見えなくなってしまった。  幸一は予想外の展開に戸惑いを隠せず、眼鏡が左上がりに傾いてしまっていた。   『オレの゙術(すべ)"が通用しない!?一体どうして……』   だがヒトミは幸一に考える時間を与える事はなかった。すぐに幸一の背後に姿を現し、背部に正拳突きを放つ。もちろん幸一にそれを避ける事は出来なかった。 幸一は我慢できず激痛に顔を歪ませる。 ヒトミはそれを見て悦に浸るような表情で言った。   『今私が突いたところは電光(背骨のほぼ中心に位置する急所)よ。その名の通り全身が痺れるでしょ? それに…あなたの゙術(すべ)"は通用しないって言ったでしょ?あなたの゙術(すべ)"は速度を極限まで落とす事が出来る。だから私もあらかじめローレンツ収縮の限界値を限りなく小さく書き換えておいたのよ。簡単なことでしょう?』   どうすればいい!?オレ達の中で一番の実力者と言ってもおかしくない幸一が、まるで赤子の手をひねるかのように扱われている。このまま3人ともヒトミに殴り殺されてしまうのか?   『あら、3人とも思考停止かしら?それとも潔く殺される覚悟ができたの?まぁどちらにしろ、まずは幸一……』         『……死んで頂戴』
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