第七章

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『糞!!どうして!?私が、こんな雑魚にぃいいい!!!』   ヒトミは荒々しい息遣いをしながら走り出し、再び姿を消そうとした。しかし、それはもう出来ないのだ。   『無理だよ。両腕を切り落としたんだ。無理に動くと出血死してしまう…死にたくなかったら゙術(すべ)"を使わない事だね。』   『ぐ、ぐぅうう……!!』   ヒトミは敗北による屈辱に苦虫を噛み潰し、その場に乱暴に座り込んだ。 するとすぐに佐々木と幸一がヒトミに近づき、手際よく応急的な止血処置を施す。   処置が終わると幸一がおもむろにポケットからナイフを取り出した。それで何をするつもりなのだろうか?   『アンタにまた走られたらマズいからね。右足のアキレス腱を切らせてもらうよ…。』   『え?…ちょっと、何言って……』   ……ブチン。       『ぎ、ぎゃぁああああ!!』   ナイフを入れられたヒトミの右の足首から下は力無くプラプラとぶら下がっている。 それを見て幸一は「まぁ7割は殴られたお返しだけどね」と軽く笑ってナイフをしまった。   ……ホントに、この人と仲間で良かった。   『ところで裕司君、さっきの話しだけど…』   幸一はいつもの少し頼りなげな表情に戻り、オレに問いかけた。まだ幸一はオレがあの時にヒトミに何をしたかを理解していない様子である。   『あの時のだよね?あれはヒトミの行動からヒントを得たんだよ。』   『ヒント?』   『そうそう。ヒトミの゙ローレンツ収縮"…あれは体積が0(ゼロ)になる現象だよね?だったら゙ローレンツ収縮"が起きている間はヒトミもオレ達に対して攻撃できないはずだよ。 でも、幸一さんにはしっかり攻撃を当てていた。   したがってヒトミは攻撃の瞬間だげ術(すべ)"を解除していたということになる。゙術(すべ)"を使っていなかったら勿論、こちら側からの攻撃も受け付けるよね?…そこを突いたんだよ。』   いまいち幸一は納得が行かない様子で首を傾げる。   『なるほど…そこまではわかったよ。でも、裕司君の電光石火のような高速移動はどうやって?』   オレは期待通りの幸一の質問に、すました顔で自分のこめかみを指で突っつきながら答えた。   『幸一さんの゙術(すべ)"を使わせて貰ったんだよ。』
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