第七章

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『幸一さんの゙術(すべ)"。あれは速度の単位であるkm/hの分子と分母を入れ替えるんだよね? 織田の時みたいに速度を高くして運動エネルギーをあげるタイプの敵には特に効果的だけど、速度とあまり関係のないヒトミに対しては全くと言っていいほど機能しない。   だからあえて幸一さんの゙術(すべ)"の対象をオレに向けてもらったんだよ。 対象が100km/hなら100h/kmとなり1キロメートル進むのに100時間かかる速度になってしまう。でも逆に、オレが時速1メートル…0,01km/hの速度で歩こうとしたらそれは0,01h/kmに変換されるよね? 1キロメートル進むのに0,01時間…つまり36秒で1キロメートル進めるスピードになれるって事だよ でもこれはあくまでオレの予想だったんで、一か八かの大博打だったんだよ。』   『そこまでの事を…あの圧倒的に不利な戦いの中でよく考える事ができたね。やっぱり裕司君、君は戦闘の才能があるみたいだ。』   どうやらオレは自分の゙術(すべ)"とは逆に、物理攻撃型ではなく仲間の能力の底上げに長けた、いわゆるサポートタイプであるみたいだ。 オレ以外の2人は共に攻撃的な性格であるので、佐々木と幸一は今までにないタイプのオレを改めて歓迎してくれた。 自分が必要とされているという喜びに胸の奥がくすぐられる。 しばらく皆で話しをしていると、佐々木が口をガムテープで塞がれているヒトミを指差して馬鹿にするように言った。   『それにしても、連中はみんな馬鹿ばかりやな。』   佐々木の言葉に幸一は大袈裟に首を縦に振って頷く。しかしそのように思える場面は見当たらなかったが…。 オレが腕を組んで考えていると、佐々木は呆れて肩を上げた。   『お前…戦闘においてはかなりのひらめきがあるが、こういう事になるとどうも鈍いんだよな。』
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