第七章

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拠点の外に出ると、そこには迷彩色の服と黒いブーツをはいた人達が綺麗に整列して立っていた。 整列している一人一人からぎらぎらと煮えたぎるような闘志を怖い程に感じる。これが自衛隊の特殊作戦軍の人間か…。   『おし!なかなか迅速な対応やな。コイツらが先程報告した織田姉弟と従業員達や。』   佐々木がそう話している最中に整列していた数名の隊員が速やかに佐々木のもとに駆け寄り、 織田らを受け取って近くの車両まで連行していった。   それを確認した髭面の男が佐々木と敬礼をかわし、情報のやり取りを始める。何度も思うが、佐々木の階級が幹部というのが今でも理解できない。   拠点のあちこちに設置した爆弾の起爆スイッチを起動して拠点を破壊した後、オレ達は近くに停車してあった自衛隊車両に乗り込みんで速やかに現地を離脱した。         『いや~、今回は裕司のおかげで助かった。お前はまだ高校生なのにな?センスあるわ!!ははははっ!!』   自衛隊車両の中で佐々木が豪快に笑いながらオレの肩を乱暴に叩いだが、オレには今それに反応できるような心の余裕は無かった。   『………ゆう…じ?』   佐々木は不思議そうにオレの顔を覗き込んできたが、余りにも反応がなったので諦めて首をかしげた。         自衛隊車両は幸一の車がある所で停車した。オレ達は下車をして隊員に礼を言った後、再び幸一の車に乗車して大多武演習場をあとにした。     幸一の車に乗った後もオレは一言も話さなかった。   あの時思わず萎縮してしまった自分が…菅藤がいないとわかってほんのちょっとだけホッとした自分が、どうしようもない程に情けなく思う。   オレは一体何の為に訓練をし、ここまで危険な思いをして実戦までしているのだ?結局自分の中で一番可愛いのは自分であるという事を思い知らされて自分自身に非常に腹が立った。   佐々木も幸一も何も話さなかった。 いつもは時間が目まぐるしく進んでいくように感じていたのだが、この時は初めて1分間が1時間に思える程長く時間を感じていた。
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