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結局オレは車内で一度も話す事なく、いつものコンビニの前で降りてしまった。
『んじゃ、裕司。明日もいつも通りの時間にここに集合な?』
『ありがとうございました……』
気持ちの入ってないお辞儀を二人にして、オレは家への道のりを力無く歩き出した。
ぐるぐると、哀しみと怒りの二つの感情がオレの頭を回りつづける。
しかし、それをどうこうできるような術をオレは知らない。
考えれば考えるほどややこしくなるだけだ。でも、そう思っても頭から離れてくれない。
頭がおかしくなってしまいそうになってる自分を落ち着かせようと、オレは必死に冷静な口調で話しかけながら道を歩いた。
…………
カツカツ…
後方に気配を感じる。靴の音からして女性だろう。
しかし、女性が敵ではないとは限らない…現に先程ヒトミと戦闘をしたばかりだ。
オレは警戒しながら後ろの人物と距離を一定に保つように歩いた。
『裕司……君、だよね?』
条件反射的に後ろを振り向くと、そこにはあの時病院にいた優子の友人が立っていた。確か名前は……
『高司(たかじ)…さん?』
よかった…敵じゃない。オレは緊張の糸をといてホッと胸を撫で下ろした。
そういえば最近学校の友人とほとんど顔を合わせてない。いつもならこの状況だと嬉しくなって話しをしたりするであろうが、今はそんな気分ではない。
オレは高司に軽く挨拶をしてその場から立ち去ろうとした。
しかし背を向けているオレに高司が声をかけてきた。ツイてない…
『ねぇ?久しぶりに会ったんだから少し話そうよ?優子の事も話しておきたいし…』
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