たった一つのコーヒー

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たった一つのコーヒー

じいちゃん… じいちゃんは覚えてるかな。あの頃のこと…。 もう忘れちゃってるかな。 でも俺にとってはとっても大切な思い出の1ページだったし今でもずっと胸の中に残ってる。 そう… あれは俺が高校③年の期末テスト前日の夜の事だった。 俺が夜遅くまで一人黙々と勉強してた時、じいちゃんトイレに行きたくなったせいか起きちゃって… 「頑張ってるな」って一声かけとくれて… でも俺は勉強しても全然頭に入らなくてイライラしていたせいか、「はやく寝れ~や」ってじいちゃんに冷たく八つ当たりしてしまって…。 でもその後、俺の目の前にそっとコーヒーを作って出してくれたよね。 「無理するなよ」って声かけてくれてさ。 いつもなら俺によく「コーヒー作れ」って言って自分は全然作ってくれないのにその日だけは違ってた。 たった一つのコーヒー。 苦くて全然美味しくなかったコーヒーだったけどなぜだろう…。 嬉しくて涙が出てくる…。 八つ当たりしてしまった俺が恥ずかしいよ。 じいちゃん… ありがとう…。
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