this is a sweet sweet love song in X'mas night

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――12月24日、だいたい朝の10時くらい。 受話器越しの声は、俺に無残な事実を告げた。 「ほんっっっっとうにごめんね!! どうしても仕事抜けられなくって! この調子だと多分……朝までかかる」 ってことで彼女にデートをドタキャンされた。 駅前のクリスマスツリー。携帯のボタンを押し、電話を切る。タバコの紫煙と同時にため息を口から吐き出す。 スーツの上にトレンチコート。手には花束。ついでにポケットの中にはオーケストラのコンサートチケット二枚。要するにデート行く気満々の格好である。 会う度にゲーセン行ったり家でゴロゴロしたりで、最近デートらしいデートをしていなかった為、クリスマスはちゃんとしたデートをしようと思っていた。 それはそれは高級なレストランを予約した。しかも窓側の席を。 コンサートは来日した海外の有名な楽団によるもので、無論チケットは馬鹿みたいに高かった。 花束は花屋の兄ちゃんに見繕ってもらい、他にも別にプレゼントが用意してあった。 以上はサプライズ兼いやがらせ。高級レストランやらオーケストラやらが彼女の肌に合うはずも無い。だからいやがらせを済ませて満足した後は家でケーキでも食ってまったりしよう――こんな感じのデートプランだった。 ちなみにこのプランを立てるまでに綿密なるリサーチが行われたり、多大な努力が払われていたりする。 でも……全部無駄に終わってしまった。やるせないったらありゃしねぇ。 なに? 準備に何万円も費やして馬鹿じゃないの? 有給まで使っちゃったし。 認めたくないけどめっちゃはしゃいでたしな、俺。馬っ鹿じゃねえの、ホント。あっはっはっはっはっ……。 心中で自虐ってると、花束を握り締めているのがアホらしくなった。それをゴミ箱に捨てて、胸ポケットからピースの箱を取り出し――握りつぶした。吸い尽くしてしまったのだ。舌打ちしつつ、携帯で友人の電話にコール。 とりあえず歩き出す。 周りにゴロゴロ居るカップルが急に憎らしく思えてきて、また舌打ち。 視界からカップルを排除しようと、空に視線を移した。 今日も天気は快晴。 青く澄んだ空が――目に痛い。 タイトル=クリスマス酩酊小夜曲 書いた馬鹿=異羽ようた
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