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ヨーコさんと出会ったのは大学の音楽サークルだった。
彼女は二年で部長。俺は一年で新入部員。
ふらっと見学するつもりで立ち寄ったのだが、『入部してくれるんだ!』と彼女に素晴らしい笑顔で言われたからには入らざるをえなかった。
その笑顔にうっかりときめいてしまったからではないぞ、決して。
んで何事も無く二年が過ぎて、2月。
彼女は四年で卒業する。
もう会えない。
だから追い出しライブの日、決心して告白してみた。
彼女は当惑するばかりで、何で自分を好きなったのか、コウタくんに好かれる資格なんて無い、とか言ってきた。
だから、三時間かけて好きになった理由と、ヨーコさんがどれだけ素晴らしい女性かという事について話した。
納得いくまで。日が暮れるまで。
要するに、口説き落とした。
そのかいあって、赤面しながら『うん』と首を縦に振らせる事ができた。
んでお互いに大学卒業して、同じ県内で就職。
最初はギクシャクしながらも、今ではゴニョゴニョする仲にまで発展しました。
まぁつまりは彼女の事が大好きだった。
あの時と変わらず。
いや、それ以上に。
そこまで思い返して我に返る。
思い耽っていたようで、自宅のキッチンにボーっと突っ立っていた。
「あれ……何するつもりだったんだっけか」
調理台を見る。ウイスキーのボトル、焼酎のビン、ビールの缶、グラス……。
「そうそう、酒を飲むんだったか」
さぁ、自棄酒を始めよう。
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