54人が本棚に入れています
本棚に追加
いつものように寺から離れた山中で武芸の稽古に励んでいた。
どこからともなく少女の声がした。牛若はその声をたよりに姿を探した。
「誰か!!おられませんか?」
その声の主は少し斜面に座り込んでいた。足首を捻ったようである。
「歩けるか?手をのばしなさい。」
少女はなんとか手をのばし斜面をのぼった。
「なぜこんな所に一人いたんだ。」
少女は俯いて小さな声で恐る恐る答えた。
「祖父母の体が…良くなくて…薬草を…」
牛若の声の調子に怯えているようだった。
「すまない、起こっているわけではなのだ。この辺りは追いはぎが横行してるから、女の一人歩きは危ないんだ。」
暗い顔をしながら少女はうなずいた。また少女は足を少し痛めているようだ。
「麓まで背中を貸そう。遠慮することはない。私の名は牛若だ。そなたは?」
少女はおずおずと牛若の背に手をかけながら答えた。
「牛若様…私の名は静と申します。」
「様はいらない、牛若と呼べばいい。」
背中にかぼそい静を背負うと麓に下った。
最初のコメントを投稿しよう!