10975人が本棚に入れています
本棚に追加
俺は杉田について調べることにした。
そして、杉田の事をよく知るという高校時代の同級生のもとを訪ねる。
アパートのチャイムを鳴らすと、すぐに髪の長い女性がドアの隙間から顔を出した。
「警察の者ですが、ちょっとお聞きしたい事がありまして…杉田良二さんの事は、すでにご存知ですか?」
警察手帳を見せながら、話を進める。すると、彼女は顔色一つ変えることなく答えた。
「えぇ、ニュースで見ました」
彼女は菅野 真代(かんの まよ)すでに、杉田が他界している事は知っていた。
「君は、杉田さんと交際していたんだよね?今のところ、彼は大学の友人にも会社の人間にも恨みを買うような人間では無いと言われていて…随分、良くできた人間だなと思いながらも高校生の時から、そうだったのかな?なんて疑問が浮かんで君を訪ねたという訳なんですが…少々、お時間頂けませんかね?」
「…どうぞ、おはいり下さい」
どうやら、話してくれるらしい。
部屋に入ると…テレビにベッド、テーブルに座布団が一枚…綺麗な女性の部屋にしては殺風景に思える。
とりあえず座らせてもらい、出された茶を飲む。
「まず、私は彼と高校卒業まで付き合っていましたが…彼にとってはゲームみたいなものだったと思います」
「ゲーム?」
彼女は卒業アルバムを取りだし、当時の杉田の顔写真を見せてくれた。
髪は茶髪で、いかにも軽そうに見える。
「彼の趣味は、弱い者いじめでした。しかも、かなり悪趣味な」
おっと…これは、今までとは違う情報が聞き出せそうだ。
俺は黙って彼女の話に耳を傾ける。
「私は、彼とは違うクラスでした。そして…この子とは幼なじみです」
そう言いながら、彼女は違う男子の写真を指さした。
山口 寛人…なんと言うか、可愛い顔をした少年だ。
色白で目は細い…スッキリした顔立ちをしている。
山口 寛人を可愛いと感じたのは、中性的印象を受けたからである。
どこかで見た事があるような…何となく、レンジの雰囲気に似ているような気がするからだろうか?
そこで、彼女の口が閉じた。
何か、考えているように見受けられる。
「え~と…君の幼なじみの山口さんと杉田さんは同じクラスみたいだが…彼がどうかしたのか?」
思わず、問いかけてしまったが…彼女は俯きながら再び口を開く。
「これから話します」
また、俺は彼女の話を黙って聞くことにした。
最初のコメントを投稿しよう!