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地雷
それを見た生瀬は、内心彼女は自分の部屋に帰れるんだろうか?と心配した。しかしそんな心配をよそに、安田はグレープフルーツサワーを頼んだ。生瀬はビールを一口飲んで、安田に質問してみた。
『じゃあ、中学とか小学校の時はどうだったの。好きな人とかいたんじゃないの?』
すると、楽しく飲んでいた安田の手が止まった。それと同時に今までニコニコしていた安田の顔が、急に曇り始めた。それを見た生瀬は、
『…何か触れちゃいけないこととかあった?』
と、少し静かに質問した。しかし安田からの返事は無かった。
安田はグレープフルーツサワーのジョッキをテーブルに置き、うつむいてため息をした。すると今度は鼻をすすり始め、涙を流し始めた。さすがに生瀬は焦りだして、どうしたの?と質問した。それと同時に触れちゃいけないものに触れたと、少し後悔した。安田は、少し涙が止まったのか、顔を上げて微笑んでみせた。涙を拭いたせいか、マスカラが少し伸びていた。そして鼻は相変わらずすすっていた。
『話しても良いですか…』
安田は生瀬の許可を求めてきた。いつもはそのまま話し始める安田が、今回に限って許可を求めてきたので、生瀬は一瞬たじろいだが、なんとか平静を保つようにして、話して良いよ、と言った。
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