東西線

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東西線

~西船橋行き、発車します~ アナウンスが終了し、東西線は西船橋に向かって走り出した。 夜11時も過ぎるとそれほど混んではいない。生瀬はちょうど一人分空いていた横椅子に腰掛けた。隣りの女性とはほとんど隙間が無く、座る時に女性が少しイラッとして眉間に皺を寄せたのに、生瀬は気付いたが、無視した。  生瀬は、そんな窮屈な状態にも関わらず、ポケットから携帯電話を取り出した。携帯を開いた時、隣りにいた女性が生瀬の携帯に目をやった。しかしその後すぐに目を逸らした。生瀬はそんな視線を感じながらも、気にしてられないといった雰囲気で、携帯電話の待ち受け画面をじっと見ていた。そこには、一人の女性が映っていた。前髪をそろえて、少し上品な感じのする女性。その女性は生瀬に向かって微笑んでいた。  『お前、そんなに上品じゃないよな』  生瀬は、電車内であるのにも関わらず、ぽつりと呟いた。それが聞こえたのか、隣の女性が生瀬の顔をチラ見した。 生瀬は、それも無視した。
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