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「兄さん…!赤ちゃん産まれたよ!!」
耳に当てた直後、咲子の歓喜した声と赤ちゃんの泣き声が耳の奥まで聞こえた。ああ…そうだった。咲子は臨月を迎えていたんだ
「そうか…産まれたか、おめでとう。よく頑張ったな」
受話器越しに喜びの余りに泣き出す声が伝わって来た。こんなに幸せな時に、どうして聖は死んだんだ…生きていたら喜んでどんなに祝っていただろう。俺は今の状況じゃ言葉だけで祝う事が出来ない
……最低な兄だ
「ごめんな咲子。もう俺…」
「聞いて、兄さん!この子にね不思議な痣があるの。左手首に翼みたいな痣があるんだ。…きっとクリスマスだから神様が特別に与えて下さったんだね」
仕事があるんだ。そう言い掛けた時、遮る様に興奮して語り始める。…左手首に翼みたい、痣…?
聖も、痣が産まれた時からあると聞いた事があった。母親は神様がクリスマスだから特別に与えて下さったんだね。と笑って聞かされたと語っていた
全く同じ痣…。
「咲子…赤ちゃんの性別はどっちなんだ?」
心拍数が上がった。聞かずにはいられない。体が震えて指先すら震える。ただ、俺は咲子の言葉を待った
「女の子だよ!まだ、名前考えて無いんだ…。どんな名前が良いかなぁって旦那と今話しているとこなんだ。兄さん…?」
一気に涙が溢れた。男が泣くのは情けないというが、周りの視線を気にする事もなくただ、ひたすら泣いた
神様は決して聖を見捨てたワケじゃない。ましてや聖は神様に愛されている存在
「……聖。聖夜と書いて聖と命名して欲しい…」
少しの間を空けて驚きの声を小さく上げた。でも、拒絶は無かった。やはり、俺の妹だ
察したのだろう…。うん、と応えてくれた
「…貴女は今日から聖だよ。宜しくね聖…」
優しい、優しい妹の声が泣き止んだ聖に話し掛ける。きっと眠っているのだろう。俺は携帯の電源を切った
空には、天使の羽根の様に白くて、優しい雪が全ての人の元に舞い落ちる
空を見れば、最愛の人の笑顔が浮かぶ
何処からともなく俺を呼ぶ声が聞こえそうだ
聖、誕生日おめでとう。
merry Xmas
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