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「……事故で、死んだ…?」
受話器越し、聖の母親が悲しみに震えた声が頭の中で木霊する。痛々しい程の声で必死に俺に伝える。泣き声が混ざり合ってうまく聞こえない
事実を受け入れる事は出来なく、握り締めた携帯と大切な小さな箱をコンクリートの上に落ちた
クリスマスで人の多い路上で立ち尽くす。人は皆、邪魔な俺を避けて行く
手袋もしてない両手の指先は次第に冷たく赤くなった
聖が、死んだ…?
そんな事、信じられない…
昨日まで普通に話していて、笑い合って、抱き締めて…キスして
状況の把握が出来ない俺は酷く混乱した。だが、冷静さを取り戻して理解を始めた。悲しみの波が俺の中に押し寄せる
立つことも、歩くことも、泣くことも
何も出来ず所構わず膝つき両手をコンクリートに当てた
落とした弾みで切れたのだろう。設定したお気楽な音楽が暢気に響く
生気の抜けた俺は無意識のうちに遠くに行ってしまった携帯を手繰り寄せる
ディスプレイの表示は“咲子”妹からだ
幼い頃に両親を失って咲子が唯一の家族。放心状態のまま親指でボタンを押し耳に当てた
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