出逢い

2/2
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
 少年が彼女と出逢ったのは、人通りの少ない薄暗い路地。  登校時間がとうに過ぎているのにも関わらず、生きる希望を失って、ただただ歩いていた。 「あらん。不幸そうねぇ、お兄さん」 「……」  自分に声をかけたのかと思い、声がしたほうを横目で見る。  漆黒のセミロングに薄いピンクのベールをつけた―おそらく占い師だろう―女性が一人、座っていた。  彼女の前に置かれている机には占いの道具だろう水晶玉と、何かのお香が載っていた。  お香からは嗅いだことの無いようなとても甘い香りがしていた。 「ねぇ。どうしてそんなに不幸なのか、占ってあげましょうか? 初回はタダで」 「はっ。俺にはもう、死ぬ道しか残ってないんだ。それなのに占いなんて……時間の無駄だ」 「じゃあさぁ、捨てるだけのその魂、もったいないと思わないの?」 「知らないね。あんたには関係ないことだろう」 「そんなこと言わないでよぉ。お得な話があるのよ」  少年は思わず彼女の話に聞き入った。甘い、甘い香りに誘われるかのように……
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!