最後の『願い』

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 いつの間にかあの薄暗い路地に来ていた。 「あらぁん。こーんな夜遅くにどうしたのぉ? お子様は歯を磨いて寝る時間でしょぉ?」  静夜は家であったことを話した。  妹の小夜が部屋に入ってきて大切な物を壊したこと。  母が自分の話を聞いてくれなかったこと。  今の自分の気持ちを。 「俺は何も悪くないんだ。なのに何で俺ばっかり……こんな目に……」  占い師はただ微笑んでいた。  まるで彼が苦しむのを待っていたかのように。 「大丈夫よ。今の君は最高にハッピーなんでしょ? だったらきっと上手くいくわよ。すべて。さぁ、今のあなたは何を願う?」  お香の甘い香りが周囲に漂い、占い師の言葉が静夜を後押しした。  その香りと言葉に誘われるかのように、彼は最後の『願い』を言った。  占い師は「大丈夫。」とだけ言い、ただただ微笑んでいるだけだった。
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