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あたしは三野祐希(みつのゆうき)。中学二年。休み時間に友達の恋愛話を聞くのが好きな、ごく普通の女の子。
ある朝の騒がしい教室。
あたしの仲の良いグループは、好きな人の話で盛り上がっている。
あたしの好きな人は、幼なじみの永久(とわ)。優しくて、でも活発な男の子。
永久は今、輝くような笑顔で友達とふざけあっている。
「三野と永久って、つきあってるんだろ~?」
「は? 俺のタイプは、あんなバカよりもかわいい子だよ! あいつは、ただの幼なじみ
最近、永久はあたしを貶してばかり。今までそんな事一度もなかったのに。そりゃあ、永久と違って、勉強も運動も出来ないけど…。
あたしと永久は、お互い暇な時にキャッチボールをしたり、テストが近くなると、永久の家で勉強会をしたりする。それくらい仲がいい。
でも、いつも一緒にいるはずなのに、永久は勉強も運動も何でも出来る。それに比べてあたしはパッとしない。
だから、あたしは永久をずっと憧れていた。何時からか、その「憧れ」が「好き」に変わった。近づきたい。そう強く思うようになった。
二週間前。
「この間の小テストの結果を返す」
次々に名前を読み上げる担任。
結果を期待していないあたしは、体が重い。結果は、二十点中十一点。前回と全く変わらない。伸び悩む点数に頭を抱える。
「中間テストも近いから、七割以上取れなかった者は必死で勉強しなさい」
担任の言葉が重く響く。
永久が、また遠くなった。
あたしの頭の中が真っ白になっている中、永久の周りは人が集まっている。見なくてもわかる。永久は、九割突破を連続八回もしている。きっと今回で九回目だ。
「祐希、なんか暗いオーラ出てるぞ」
いつの間にか、永久が目の前にいる。
「点数悪かったの。永久には関係のない事」
永久は、軽く溜め息をついた。
「そんなに背伸びしなくてもいいじゃねぇか」
そんな事を言われても、全ては永久に近づくため。永久の隣に並ぶため。
永久が遠く感じる。どうしてあたしってこんなに馬鹿なんだろう。永久に近づかなきゃ、せめて勉強だけでも近づかなきゃ、永久と釣り合う訳がない。
家に帰って、自分の部屋にこもって一心不乱に勉強した。
永久が驚きながらも、褒めてくれるように。笑顔を見せてくれるように。
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