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私は何もないところで一人眠っていた。
上も下もなければ右も左もない。
私だけが存在しているところで、長い長い眠りを貪る。
ふいに、自分を呼ぶ声がした気がして少し意識を起こす。
じっと耳を澄ますと、やはり自分を呼ぶ声がどこからか聞こえてくる。
起きて、起きてとその声は言う。
私は眠りを邪魔されたくなくて、耳を塞ぎその声を遮断しようとする。
けれど、その声は私の手を擦り抜けて耳に届く。
うるさくてたまらない。
私は体を縮め、拒絶の言葉を口にする。
「イヤ!」
そう言った自分の声が思ったよりも大きく響いて、私は驚いて飛び起きた。
起きてすぐに目に飛び込んできたのは、前の席の人の背中だった。
周りを見回すと、皆真剣な表情で黒板を見てる。
自分では大きな声を出したつもりだったが、この様子だと私はただ寝てただけらしい。
きょろきょろするのをやめて前を見ると、黒板は寝る前にはなかった文字で埋め尽くされていた。
慌ててシャーペンを手に取り、ノートに走らせる。
黒板の内容を半分も写さないうちにチャイムが鳴ってしまう。
「ここはセンター試験によく出るところだから、しっかり復習をしとくように」
……そう言いながら黒板消さないでよ。
まだ私写してないのに。
しょうがない、後で誰かにノート借りよ。
私はさっさと机の上の物を全部鞄にしまうと、大きくのびをする。
また、あの夢見ちゃったな。
もう見たくないのにさ。
私が思わずため息を吐くと、後ろから背中を突かれた。
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