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「ほら……!エイム、早く!」
おねーちゃんが私の腕を引っ張りながら、慌てたように言う。
もうどのくらいの間、走っているだろうか?
いや、そもそも何で走る必要があるのか?
私には解らない。
「おねーちゃん、疲れた」
本当に疲れてしまったので、私はおねーちゃんを見上げ、縋るように言う。
「だめっ……!走るの!」
おねーちゃんは有無をいわさず、更に強く私の腕を引っ張り、走る速度を上げる。
「う~……!」
脚だけでなく、腕の方まで痛みだしてきた。
それでも、文句を言ったところでおねーちゃんは止まらないと判断した私は、ただ不満そうに唸るだけ。
「はぁ……はぁ……」
森を抜け、町が見えてくる。
既に息は切れ切れで、これ以上走る気にはなれない。
「おねーちゃん」
「なに?」
「おとーさんは?」
もう走れないのなら、おとーさんにおぶってもらえばいい。
いつもそうしてもらったように。
「……いないよ。だから、走るの」
「え……」
一瞬、おねーちゃんが何を言ったのか理解できなかった。
「おねーちゃ……」
私が何か言おうとするのを遮るように、おねーちゃんは再び私の腕を引っ張る。
ああ、二人の姿はまるで逃げる兎のよう――
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