一 日常と非日常

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 龍二が正気に戻ったのはそれから二十分の時間を要するのだった。  そしてSHL── 「今日から君達の担任になった進藤瑞穂でーす♪ 体育担当でーす♪ 龍二の従姉やってまーす♪ ヨロシクねー♪」  終始ハイテンションで瑞穂は自己紹介を終えた。  いつもの龍二なら「そんな子供じみた自己紹介すんな!!」とツッコミをいれているところだが、お生憎と今は男子共の先程のよりも数倍増した殺気のこもった視線に耐えねばならないのでそれどころではなかった。  美人の幼なじみの恋人に加えて絶世の美女に相応しい従姉にベッタリされていたことを踏まえると、クラスの男子共の気持ちも分からなくはない。 (早速大変だな、お前も)  頭に直接話しかけてきたのは、彼の宿龍の一人で紅龍である。たまにこうして彼と会話を楽しもうとしている。 (なぁコウ。こいつらを焼いてくれ) (はっはっは。そう、熱り立つでない。暫くすれば収まるじゃろうて)  ひどく老人ぶったしゃべり方をしたのは、もう一人の宿龍である伏龍だ。共に趙家では『五大龍』と称される者である。  彼が自分の龍達と会話している間に、話は先に進んでいく。 「聞いてると思うけど、今日は転校生が七人来てまーす」  首だけ前を向けて突っ伏していた龍二は、あぁだから松山とかいないのかと空いている机を見ながらそう思っていた。 「早速紹介するね。じゃあ入ってきて~」  瑞穂に言われてドアを開けてその転校生たちが入ってきた。  だが彼らを見た瞬間、龍二や泰平、明美、良介はベテラン芸人顔敗けのズッコケを披露した。 「何でお前らがここにいるんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」  立ち上がって指を差し大声でツッコむ龍二に転校生の一人が、にこっと笑って 「龍二君、久しぶり」 と返した。途端、女子生徒の黄色い声が木霊する。どの顔もイケメンであっちからだ。 「はーい、静かにね~。じゃあ自己紹介お願いね」  瑞穂に促されて、龍二に微笑んだ転校生から自己紹介を始めた。 「中国四川省から来ました劉封(リィゥ・フォン)です。どうぞよろしくお願いします」  営業スマイル的な彼の笑みに女子生徒の黄色い声が声量が増す。 「同じく劉禅(リィゥ・チャン)です」 「関平(グァン・ピン)だ」 「星彩(シン・ツァィ)よ。ヨロシクね」
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