一 日常と非日常

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『華龍、アンタ何してんの!? つか、姉さんて何だよ!?』  華龍もそれに返す。 『あら龍二君久しぶり。何って姫に野蛮な輩がつかぬように私も学生となって───』 『それ以前に本名名乗んなよ!!』 『別にバレはしないわよ』 と言ってからため息をついた。 『別に私は龍二君達がいるから大丈夫だって言ったんだけど、子龍さんが・・・・・・ね』 ───あぁ、成程ね。  龍二は納得した。超のつくシスコンである趙雲なら言っても聞かないよなと思いつつ、彼女との会話を止め机に突っ伏した。  暫く続いた静寂を破るように可愛い声が教室に響いた。 「玄武っていいまーす。よろしくおねがいしまーっす♪」 (あぁ、まだいたんだ。へぇ~玄武って言うのか~・・・・・・ん? 玄武?)  ガバッと顔をあげた。それは安徳らも同じで、クラス中の視線が彼に向いていた。 (・・・・・・何でいんだよアイツ?)  龍二は頭を抱えていた。  明らかに高校生じゃない背格好の緑眼の少年がいたのだが、少年の純粋無垢な笑顔に、龍二達と瑞穂、劉封らを除いた生徒全員の心は再び射抜かれた。  生徒らがまさに飛びつかんとしたその時、教室のドアが勢いよく開き、青眼青髪の男がずかずかと入ってきた。男は少年に近づくなりいきなり拳を少年の頭に降り下ろした。 「イタ~イ」  涙目になる少年をもう一発殴って気絶させると、彼を担いだ男は龍二らには眼もくれず教室を後にした。 「すまんな瑞穂。生意気なガキが邪魔した」  去り際に男は瑞穂にそう詫びた。 (青龍ありがとう)  龍二は密かに感謝した。  青龍が去って数秒後、堰を切ったように生徒達が瑞穂に群がってきた。 「先生! 今のカッコイイ人誰!? 知り合い!?」 「なあなあ! あのすっげぇかわいい奴の名前何てぇの!?」  質問の大嵐に困り果てた瑞穂は龍二に助けを求めたが、彼はさっきのお返しと言わんばかりにそ知らぬ顔をして「がんばれよ~瑞穂せーんせー」と手をヒラヒラさせてやる気のないエールを送ってやった。  ここで、ようやく『地獄の案内人』の我慢が限界に来た。彼は刀を抜くと、群がる生徒らの眼の前にそれを見せた。  真剣のそれは、太陽光を浴び己が身体を輝かせていた。
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