一 日常と非日常

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 義輝は、元々佐々木家の家宝大般若長光に宿っていた霊だったが、ある一件以来現世に蘇り、現在は徳篤の庇護の下佐々木家に厄介になっている。  さて、また別の場所では。 「青~龍く~ん、あ~そ~ぼ~♪」 「断る」  この世界にはない天女のような衣を纏った、金の長髪の女性が、青龍に飛びついたが、彼は横にヒョイと避けた。その為、女性は壁に顔面を強打した。 「わーん、痛いよ~。青龍君がい~じ~め~た~」 「戯言(たわごと)を抜かすなバカたれが!」  泣き出した女の後頭部をハリセンで叩くと、彼はその場で彼女を正座させ説教を始めた。 「だいたい、お主は宿龍の長老としての自覚がじゃな───」  その様子をやるせない顔で見ていた青年に、龍二はヤキソバを食らいながら尋ねた。 「子龍さん、これは一体どゆこと?」  彼ら一族の先祖である趙雲、字は子龍の横では、華龍が 「天龍様・・・・・・・・・」と特大のため息をついていた。  華龍と同じく盛大なため息をついた趙雲は、その経緯を語りだした。 「───君達が元の世界に帰って、趙香達が君達の世界に行ってすぐにね、『青龍君に会いた~い』とかわがまま言って、私を巻き込んでこっちに来たんですよ・・・・・・全くもう」 (わー。自己中極まりない長老さんだな)  ヤキソバをぱくつきながらそう感じた龍二は 「あー、その、大変だね、子龍さん」 と労(ねぎら)ってやったが、彼は頭を抱えて唸っていた。 「兄様・・・・・・・・・」  遠くで、妹の趙香が兄を憐れみをもって見ていた。 「誰かあの方を教育してほしい・・・・・・・・・」  龍一の宿龍聖龍が、華龍と同じように特大のため息をつきながらぼやいた。  宿龍も、お子様精神の長老を持って大変そうである。  歓迎会後、劉封、呉禁、趙雲、趙香は進藤家に、関平は佐々木家、星彩は神戸家、劉禅は後藤家と割り振りが決まり、明日は休日ということで都内を案内することになった。  翌日。指定された公園に、ほとんどのものが集まっていた。後は、例の二人だけである。 「昨日聞きそびれてしましたが、貴方たちはこちらの世界のことをご存じのようですね?」  二人を待ってる間、安徳はそう尋ねた。 「えぇまぁ。ここに来る前に、白朱さんにみっちりと事前講義してもらいましたから。今のこちらの世界の情勢から貴方達の好みまでバッチリと」 (最後のは要らない気がする・・・・・・・・・)
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