一 日常と非日常

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 池田良介は微笑ましく、近藤明美は驚愕しながら教壇でいちゃついている恋人達を見ていた。女生徒達も彼女の豹変振りにはさぞかし驚いているようで眼をぱちくりさせながらヒソヒソと会話していた。  安徳は来る時の為に、自分の席についていながらいつでも抜けるように長光を机の上に置いていた。  臨戦体制の安徳をあえて刺激しようとするバカはこのクラスにはいない。その為、男子共は遠くから恨み妬み殺気ビンビンの視線を送るしかなかった。 「そういやぁ、今日転校生が来るらしいよ。それも六人くらい」 「あぁ、どーりで加賀美とか数人いないと思ったわ」 「後、担任も新しくなるんだって」 「そんなこと、始業式で言ってたかしら?」  明美と良介がそんな他愛もない話をしていると、廊下を誰かが走ってくる音が聞こえてきた。それもどんどん近づいて来るようだ。 「りゅ~うじ~!」 「のわぁっ!!」  教室に入ってきた何者かは、真っ直ぐ龍二にタックルをかました。その勢いで龍二は床に後頭部を強打した。そして達子はいつの間にかどいていた。 「会いたかったよ~龍二~」  侵入者は、腰まである淡い赤髪の女で龍二に頬擦りしているが、彼女の声に龍二は、はっとした。 「その声・・・・・・テメェ! 瑞穂!」  女は進藤瑞穂といって龍二の従姉である。ついでに言えば、かなりブラコンでもあったりする。 「離れろ瑞穂! うっとおしいわ!」 「い~や~だ~♪」 「いいから離れろ!  それより、教師の仕事はどうした仕事は!!」 「仕事? ここだよ?」 「ごたくはいいからさっさと仕事に───えっ、何だって??」 「今日から私がここの担任になったんだよ~♪」 「・・・・・・はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!????」  驚きの表情のまま、龍二は固まってしまった。 「あっ、固まった」 「固まった固まった」 と苦笑いする泰平達の眼の前で、達子は石となった彼を心配して近寄るかと思えば、彼女は彼の頬を突っついていて、どうやら意外に面白かったらしく子供のように無邪気に笑いながら突きまくっていた。 「タッちゃん・・・・・・・・・」  この時、明美は何故だか嘆かずにはいられなかった。
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