キセキノショウタイ

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プレゼントは自分で用意した方がいいだろう。 予算1万円以内で、大和撫子をいかに喜ばせるか。 女性にあげるものの代表として、アクセサリー類がある。付き合う事は確定なんだし、ここはペアリングなんてどうだろう。 しまった。僕はチエちゃんの指のサイズを知らない。そもそも、指のサイズの単位すら知らない。 またしてもネットに頼ってみると、指のサイズは号で表すらしい。ご丁寧に約何センチかが書かれていたが、残念ながらチエちゃんの指をまじまじと見たことがない。僕にそんなフェチはないのだ。 ペアじゃなくてただのアクセサリーならどうだ。 そう思ったけど、よくよく考えたら彼女は金持ちの家の娘。安い貴金属をあげたら、鼻で笑われてしまうだろう。同じ銀色でもシルバーじゃ駄目なのだ。プラチナやホワイトゴールドじゃなきゃ、彼女の元では輝いてくれないのである。 アクセサリーの線は消えた。 それこそ、バックや財布なんかどうだ。プレゼントとしてはベタである。 ブランドものは無理だけど、これらのものはセンスでごまかしが利く。安くてもセンスのあるものならば喜んでもらえる。 ところでだ。 僕ってセンス良かったっけ。 服を見る。部屋を見渡す。 深緑のセーターに、ジーンズ。部屋はほぼ、茶色と青。 センスがあるとかないとかじゃない。 無難だ。僕は無難男だ。いつでもエキストラとして溶け込める人間だ。 そんな僕が選ぶバックや財布はきっと、無難なもの。使えるけど、驚きの無いもののはず。 駄目!ロマンがない。もっと色気、そうだ、色気のあるプレゼントじゃなきゃ。 パンティ。それも黒とか赤のTバック。 違うな、色気じゃない。いやらしいオヤジがOLに渡すホワイトデーのお返しみたいだ。 変わったものがいいな。自分じゃ買わないけど貰ったら嬉しいもの、とか。 例えば…たこ焼き機なんてどうだろう。ちょっと欲しいけどやっぱり買わなくない?あれって! いや、クリスマスプレゼントではないか。 もっとシンプルにいこうか。 図書券。 読書感想文で入賞した時の賞品か。あれ、散々本読ませといてまた読ませる気?って言いたくなるよね。 いっそのこと僕をプレゼントなんてどうだろう。童貞を捧げますって。むしろ婿養子にさせてくれと。 駄目だ。考えすぎておかしな方向にいっている。 今日はいったん寝よう。明日と明後日、2日かければいい案も浮かぶ筈だ。 僕はベッドへと体を沈めた。
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