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そこは、真っ白な外観で、鋭角の屋根が空へと伸び、その先端には十字架が置かれていた。
そう、教会である。
静かに佇むそれは、やわらかな光を持って僕を迎えてくれた。
思わず足を踏み入れると、まず高い天井に目を奪われる。そして、ステンドグラスから注ぎ込む日差しが、僕を飴玉色に染めていた。
この手があった。
そもそもクリスマスとはなんだ。イエスキリストの誕生日だ。クリスマスは、キリスト教の祭りなのだ。
そのクリスマスを教会で過ごす。これ以上に正しい過ごし方があるだろうか。いや、ない。
チエちゃんは真面目でおしとやかな娘だ。きっと混雑した街中より、教会で静かにクリスマスを過ごす方が気にいるんじゃなかろうか。
希望が見えた。これでクリスマスを楽しく過ごせそうだ。
「ごゆっくり見学なさって下さい。」
希望で胸が一杯になったと同時に、誰かが声をかけてきた。牧師さんだ。
「教会は初めてですか?」
牧師さんの笑顔に癒される。今すぐ洗礼をうけでも後悔しなさそうだ。
「はい、初めてで、クリスマスを教会で過ごしたいんです。」
きっと今の僕を鏡で見たら、頭にわっかがついているんじゃないだろうか。
天使の微笑みを牧師さんへ向けると、牧師さんは通常の日曜礼拝は23日に行われるが、今年は24日が振替休日で休みなので、その日もクリスマス礼拝が行わると教えてくれた。
「じゃあ、彼女と来ます。」
僕が答えると牧師さんは頷いた。
「では、礼拝の後はお家でクリスマスのパーティーですね。」
何だって。
お家で…
そうか!
牧師さんの一言で、教会後のデートプランが急速に決まっていく。
「では24日に!」
僕は教会から駆け出した。
決めたぞ。
クリスマスは、教会で祈りを捧げた後、僕の家に行く。
プレゼントは手料理、そしてケーキ。可愛いロウソクもつけて、それを灯してお喋りをする。
そして親にバレない様にチエちゃんは天使から小悪魔…
いけない、また邪な気持ちが。
とにかく、そうと決まれば材料を買い出そう。部屋も綺麗に片付けなきゃ。今日明日で足りるかな。
気付けば僕は、スキップになっていた。
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