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1993年初夏――――。
蝉が鳴き止む程暑くなった昼過ぎ、五年生の少女は少しバテ気味にとぼとぼと家路についていた。
いつもは近所に住む一つ年上の少年と一緒に帰っている。
しかし今日は六年生が校内行事で少女は一人で帰らなければならなかった。
少女はあまりの暑さに少しでも早く帰ろうと近道の空き地を通った。
大人からは近付いてはいけないと聞いていた空き地。
鉄条網を越えて茂みを横断する。
胸ぐらいまで延びた雑草が少女の腕に柔らかく触れる。
この暑い中、不快度を増すだけの草を振り切るようにして走っていると、少女は何か柔らかい物につまづいて転んだ。
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