341人が本棚に入れています
本棚に追加
外は雪がしんしんと降っていた。
降り積もった雪が白銀の世界を創りだしていた。
ひらり、ひらりと落ちてくる白い雪片を、ロイドは手を伸ばしてそれを掌で受けた。
雪は手袋の上でたちまち溶ける。
それを見ていたコレットがふふふ、と笑った。
「どうした?」
「え?うん……ちょっと昔のことを思い出して、懐かしいなーって思って」
「昔のこと?」
「うん。私が天使化してて、感覚がなかったときあったでしょう?だけどみんなが……ロイドが私を治してくれた」
ロイドは首を振った。
「俺じゃない。おまえを本当に助けたのは、アルテスタさんだよ」
「そうだけど……でもそれも、ロイドが頑張ってくれたからだよ?だから、今の私がここにいる─」
「そっか……」
コレットは続けた。
「それでね、私が“寒い”って感じたのはここでなんだよ?」
ロイドは、はっとした。
そしてコレットが外で話をしようと言った理由が、ようやく理解できた。
「コレット、ちょっと上行かないか?」
ロイドはバルコニーを指差した。
そう─かつてクラトスを父親と認めることができ、ユグドラシルと戦うことを決意したあの場所だ。
「うん。私も……そこに行きたかったん─あっ」
バルコニーに目をやっていたものだから、段差につまずいて危うく転びそうになるところを、ロイドは受け止めた。
「えへへ、ごめんね」
「ったく、しょうがねえなぁ……ほら」
ロイドは腕を差し出した。
コレットは一瞬びっくりしたような顔になって、それから嬉しそうに微笑み、その腕に自分の腕をそっと絡めた。
そうして、ゆっくりと歩いていく。
ロイドは自分で言っておきながらも、とても気恥ずかしかった。
「あ、─ほら!ついたよ?」
コレットに引っ張られる形で、ロイドは他に人のいない展望台に立った。
最初のコメントを投稿しよう!