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「綺麗だねぇ……」
コレットはゆっくりと、はっきりと呟いた。
本当に綺麗だった。
バルコニーから見渡せるフラノールの街の景色。
屋根を白く彩られた家が立ち並び、窓に灯る明かりは、白銀の世界にあって、見ているだけでも胸が温まる感じがする。
正面には大きな時計塔がある。
背には色とりどりのステンドグラスが輝いている教会がある。
全てが─2年前のまま……
街は静まり返り、2人だけの世界のような─そんな感じさえ覚えるほど静かだった。
ロイドはしばらく何も言えずにその景色に見入っていた。
「……ロイド、覚えてる?」
コレットが街を見下ろしながら呟いた。
「2年前にここでお話したこと……」
「ああ。覚えてるよ」
ロイドも白く染まった街を見下ろしながら答えた。
「今度は……守れたね。この景色を」
「ああ……守れたな。そうだ、知ってるか?ドワーフの誓い第七番」
コレットはくすくす笑った。
体が揺れているのが触れ合う腕と肩を通して感じられる。
「うん。ロイドが一番嫌いなやつだよね?」
二人は顔を見合い、呼吸を合わせると、同時に言った。
「─正義と愛は必ず勝つ!」
「─正義と愛は必ず勝つ!」
二人はひしと笑いあい、それからロイドは、また街の景色に目線をずらすと、小さくため息をついた。
「本当にその通りだったな……オレ達はユグドラシル─ミトスを倒して、世界を一つに戻すことが出来た─」
ロイドは続けた。
「─そして、沢山のものを守ることが出来た。勿論……お前も含めて、な」
瞬間、コレットと組んでいたロイドの腕全体が、急に暖かくなった。
ロイドは目線を腕にずらすと、コレットがロイドの腕を両腕でぎゅっと抱き締めていた。
ロイドはとても落ち着かなかったが、決して不快ではなく、コレットといつも一緒にいるときとは、少し違った気持ちが込み上がってきた。
ロイドはその小柄な体を自分の胸にそっと寄せた。
彼女に触れることはとても神聖な感じがして─罰が当たるような気もしたが、それでも構わなかった。
彼女は目を瞑り、頭を彼の腕に預けた。
教会のステンドグラスを通して注がれる光が創り出す二人の影が、一つに重なっていた。
(ロイド……ありがとう)
彼女は心の中でそう呟いていた。
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