お面

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「はい、300円!」 準はお店の人にお金を渡し、箱の中に手を入れ、勢いよくかき混ぜてから一枚とる。 三角に折られた赤い紙の真ん中に黒く染められた部分を丁寧に契りとる。 「残念。九等はここから選んでね」 九等とかかれた紙を見て、店の男は賞品の場所を指差す。 そこに足を運ぶと、どうやら賞品はお面のようだ。 準は隅々まで壁に飾ってあるお面に目を通す。 目を通していくうちに準の笑顔は消えていく。 「ねぇー、なんだかここにあるお面変じゃない?」 小さな手を中に浮かせ、人差し指をたてお面を指差す。 準が指差した場所にあるお面はなにやら奇妙な表情をしている。 一つ一つがリアルすぎるのだ。 まるで本当に生きているかのように笑ったり、怒ったり、泣いたり。 さまざまな表情をしたお面が飾られていた。 すると店の人が真っ白な何も描かれていないお面を手に持って、準の前に突き出した。 「ここにあるお面は自分のお面なんだよ。このお面を被れば君の顔をコピーして、ここにある人達みたいに君そっくりのお面が出来上がる。世界に一つしかないお面を作ることが出来るんだ。ほら、これをつけてごらん」 突き出された真っ白なお面を両手で受け取り、言われたとおりに紐に手をまわして恐る恐る耳にかける。 一瞬お面の中で視界が奪われる。 驚いてすぐにお面を外すと、準の世界には色が失われた。 まだお面をつけている時のように、視界が見えなくなったのだ。 同時に話す事も出来なくなった。 そして息を吸うことも。 準は今、真っ白な何も描かれていないお面の状態なのである。 お面と引き換えに自分の顔をとられてしまったのだ。 次第に息苦しくなり、汗ばむ準。 真っ白な顔は徐々に紫色に染まっていく。 (僕、死んじゃうの・・・・?苦しいよ・・・)
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