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10:30
人里離れた街道沿いに佇んでいるとはいえ、この茶屋は中々繁盛している様だ。旅人が寄るには都合の良い場所にあるあたりがその理由だろう。小さいながらに存在感がある。
店に入ると、奥から主人らしき男が顔を出す。
「らっしゃい、二人かい?好きに座ってくんな」
「ありがとう。馬も二頭いるんだけど、裏で休ませて貰えないかな?」
「構いやせんぜ、ついでに水もあげときましょうか。」
「それは助かるよ。さ、ここに掛けよう」
主人の奥方らしき女性が茶を運んできてくれた。折角なので団子と饅頭を頼む。
時間帯のせいか、客は僕達の他に数人いるだけだ。いずれも祭に向かうらしく、耳に入る話は祭の話題ばかりだ。
「あ、いらっしゃ……っ!!」
新たな客を見て店の主人が言葉を失ったのは、秀吉が十八皿目の饅頭に手を伸ばした時だった。
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