風と土 ~<時の足音>

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釣りと言っても、道具は 干し竹に糸を縛り針を付 け、餌はミミズ、現在で は考えられないお粗末な 道具で舟着き場から、静 かな海面に、掛かる魚は 、ハゼ・カレイ・セイゴ ・アナゴ。余り大きな魚 は釣れない。 それでも、やはり魚は貴 重で伸行の好物である、 よくこの辺で釣れる事を 耳にした伸行、だが一向 に、釣れる気配が無い。 『静かな海に、釣りは無 理だワハハハハ』 伸行 『?』 背後を見るといつの間に か日焼けした、真っ黒い 顔、白い歯、ガッチリと した身体、手に長い棒と 袋らしい物、 大木三次だった。 三次 『穏やかでは、釣れない ぞ潮が動いてない』 伸行 『そうかぁ、道理で釣れ ない訳だ』 三次、 『どうせ、釣れないんだ 、暇なら手伝え』 伸行 『かまわんが、手伝うと は?』 三次 『なぁ~に。簡単な事だ 、俺の舟に乗って、俺が 取って来た魚と舟が流さ れん様に、番をするだけ だ』 伸行 『わかった、だが魚が本 当取れるのか?』 三次 『取れる、俺に任せろ』 三次は、漁村の有力者の 三男で、漁場に詳しい 伸行 『ところで、名は?』 三次 『大木 三次』 伸行 『山路 伸行二郎』 三次との出会いで伸行は 大きな力を得る事になる 、あの守弘に送る事が出 来たのも、『熊』のお陰だった。又柳『蛙』と知 り合う事が出来たのも、 彼と知り合う事が無けれ ば、無理であった。 三次 『山路様の御子息でした か、ご無礼致しました。 父から山路家には、御恩 があり、以前他所の漁村 との、いざこざで、伸行 様の御父上が間に入って 頂き話しが、すんなり納 まり、今では父がこの辺 の漁長です』 伸行 『意外だな、父がそんな 事もして居たなんて、武 芸だけはよく世間から猛 将と言われ、神戸の殿に 信頼されて要ると聞いた が…』 (父も中々やる見直した な、治めるとは、表ても 裏もこうゆうことか) 伸行 『父は父、俺は俺、三次 さん、これからもよろし く頼みます、いろいろ知 りたい、海も…』 三次 『私みたいな者で宜しけ れば、何なりと』 伸行と三次は穏やかな海 に出て行った。
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