第三章 民宿・さざ波

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「ま、それもそうね」  そう言うと紅葉はお盆を机の上に置いて畳の上に座った。 「別に毒とか入れてないから食べてよ。無理にとは言わないけど」 「……あっそ。おまえが作ったものなんて食いたくないけど、まぁ食べ物を粗末にしたくないから食ってやるよ」 「…………ホントあんた可愛くないわねぇ……まぁいいわ。せっかくだから食べてよ。アンタが言う通りもったいないしね」  佑樹はニッと笑う紅葉の顔をチラッと盗み見ると、お盆の上からおにぎりを一つ取って口に運んだ。 「……どう? 美味しい? ……美味しい……でしょ?」  不安そうに尋ねる紅葉を無視して佑樹は再びおにぎりをかじった。  正直、メチャクチャ美味しかった。手作りのおにぎり……口に出せないけど、実は生まれて初めてだった。  幼稚園の遠足も、小学校の運動会も、中学の部活の試合のときだって、いつもコンビニ弁当だった。  でも物心ついた頃からずっとそうだったから辛いと思ったことはない。冷たい米とおかず……それが当たり前だと思っていたから。  でも、早乙女が作ってくれたおにぎりはなにか違う。なぜか温かくて空っぽになった胃と心を同時に満たしてくれる。
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