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「泣いてなんか……無いわよ! 見るなバカァ……」
紅葉はそう言って佑樹の肩を押して離れると、後ろを向いた。
「たく、素直じゃないのはどっちだよ、バ~~カ」
「う、うるさい……だいたい最初は景色のお陰だとか言ってたくせにどういうつもりよ? ホントのこと言いなさいよホントは……」
「美味いよ、メチャクチャ。こんなに美味いおにぎりは生まれて初めてだ。だからもう一個貰うな」
紅葉の言葉を遮るようにそう言うと、佑樹はお盆の上からおにぎりをつまんで口に運んだ。
「えっ? うん……あ、あのさっ!」
紅葉は頬をほんのり赤く染めながら佑樹の方を向くと、彼の顔を覗き込んだ。
「あん? んだよ、気持わりぃ……」
「気持悪いとはなによ! ま、まぁいいわ……それよりそのおにぎり、本当に美味しい?」
「お前ホントにしつこいな……美味いっていってんだろうが」
そう言って佑樹はおにぎりを食べ終えると窓枠に座った。
「そ、そっか。そうなんだ……なんか嬉しいね。美味しいって言って貰えると」
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