第三章 民宿・さざ波

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「えっ……? ちょ……どうしちゃったのよアンタ……」  佑樹は紅葉の手の上に自分の手を重ねると、ずいっと自分の顔を彼女の顔に近づけた。  こんな気持ち初めてだ……知りたい。もっと、もっと早乙女のことを……。 「オレさ、お前のこともっと知りたいんだけど」  そう言いながら佑樹はさらに顔を近づけた。今では彼女の吐息が肌に当たるぐらいの距離まで近づいている。 「ちょ、ちょっと! 顔近い……よ……」 「なに? 近づいちゃダメ?」  そう言った瞬間勢い良く戸が開いた。 「紅葉ぁ! なにやって…………」  勢い良く開いた戸の先には紅葉と同じちょぴり恥ずかしい浴衣姿の里佳が立っていた。  里佳は目線を二人の重なった手に移すと、わざとらしく咳払いをした。 「い、いやぁ~~お取り込み中でした? 私に気にせずどうぞどうぞ。まさか出会った初日でここまで発展するとは……」  里佳の目線に気づいた佑樹と紅葉は慌てて同時に手を引き窓枠から降りた。 『ち、違う! 断じてそんな関係じゃ……』
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