第三章 民宿・さざ波

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 里佳は見事にハモってしまった二人をニヤニヤしながら見つめた。 「仲がよろしいことで。氷室、あんた凄いわ! 紅葉を一日で落とすなんて」 「お、落ちてんかないわよ! 里佳のバカッ! 私女将さん呼んでくるから、佑樹君のことちゃんと見張っててよ!」  頬をほんのり桜色に染めながら里佳に向かって叫ぶと、紅葉は足早に部屋を後にした。 「はいはい、まったくもう、相変わらずねあの子は……さてと」  里佳は気まずそうに部屋の隅に立つ佑樹に近づくとグイッと胸ぐらを掴んだ。 「うわっ!? なにすんだ!」 「うるさい! アンタ紅葉になにしたの!?」 「なんだよいきなり! なんにもしてねぇよ! 離せよ!」 「嘘つくなっ! 紅葉が初対面の人にあんな表情するはずない! なにか弱みでも握ったんでしょ!? 紅葉に変なことしたら絶対に許さないわよっ!」  佑樹は強引に里佳の手を振りほどくとギッと彼女を睨みつけた。 「ホントになんにもしてねぇよ! それに変なことをする気もねぇ! ただアイツともっと仲良くなりてぇ……それだけだ!」
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