第三章 民宿・さざ波

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 里佳は小さく息を吐くと佑樹を睨み返した。 「……その言葉信じていい? 氷室は紅葉の味方になってくれる?」  突然不安そうな表情に変わった里佳の姿に、佑樹は一瞬戸惑ったが、鼻で笑うと里佳のおでこを小突いた。 「味方になるとかよく分かんねぇけど、とにかくオレはアイツが気になるの! ……なぜか……。まぁ、敵にはならねぇから安心しろ。アイツにはおにぎり貰った恩もあるしな。しかも二個」  そう言うと里佳の顔から一気に血の気が引いた。 「う、嘘でしょ!? で、それどうしたのよ!?」 「もちろん食べた。具はなんか良くわかんないものが入ってたけど、メチャクチャ美味かったぞ。そうだ春野! お前早乙女に謝れよな! あんなに料理上手なのに下手とか言ってんじゃねェよ!」  里佳はそう言う佑樹の手を両手で掴むと、尊敬の眼差しを送った。 「アンタ、本当に救世主かもしれない……。私と女将さんの……いや、紅葉にとっても!」
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