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「コラァ! 聞いとるのかモヤシィ!」
「はい、聞いています……」
「聞いてるなら返事をせぇ! バカタレ! いいか、こんなに雑巾がけに時間かけてたら学校に間に合わないぞ!」
「えっ? あの……その感じだと学校始まってからも毎日雑巾がけを……」
「当たり前だろう!? 雑巾がけが終わるまで学校に行かせたりしないよ!」
バンっと机を叩きながら立ち上がるとお祖母さんはたくあんを佑樹に差し出した。
「だから沢山食って力つけな。それであんなバカ息子のことは忘れるんだ。いいね、佑樹は今日からうちの子だ。わかったかい?」
さっきまでとは違うお祖母さんの優しい表情に口元が微かに緩んでしまった。
「はい……ありがとう、お祖母さん」
「がぁっ! お祖母さんは止めぃ! 私を呼ぶときは女将さん! それと、今から暇をあげるからちょっと高校の下見に行ってきな。ああ、そうだ」
女将さんはそう言いながら台所に行くとお弁当箱を持ってきた。
「ついでにこれを紅葉に届けておくれ。あの子、陸上で白浜臨海高校に入学したから春休みから練習に参加してるんだよ」
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